健康長寿のために行う
4つの要素

当院の前身となる「みやはら医院」より、健康長寿への道(アドバイス)を継承させていただきました。
こちらに記載したものは、みやはら医院直伝のピンピンコロリにおけるアドバイスを一部抜粋したものです。

「運動」と言えば
有酸素運動です

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有酸素運動とは、息を吸ったり吐いたりしてたくさんの酸素を体内に取り入れながら全身の筋肉を比較的ゆっくりとリズミカルに動かして行う長時間続けられる運動のことです。
正しい姿勢で歩くと体幹やお尻、ふくらはぎなど普段あまり使われていない筋肉が刺激されるため、日頃から意識して歩くだけでも筋力・代謝アップに役立ちます。
インスリン抵抗性の改善にも役立ちます。

代表的な有酸素運動はウォーキングです。
その他、ジョッギング、水泳、自転車などもあります。
有酸素運動は全身の血流を増加させ、体全体に多くの効果をもたらします。

ウォーキングしていても姿勢が悪いと効果が上がりません。
いつも正しい姿勢で歩くように心がけてください。
正しい歩き方のポイントは、背筋を伸ばして、胸を張って歩くことです。
背筋を伸ばしてウォーキングをするだけで赤い筋肉が多い背筋の強化につながり、ミトコンドリアの機能が改善するといわれています。

運動を始める前に

運動を始める前にぜひ覚えておきたいことをまとめました。

  1. 安全第一 無理せず、焦らず、コツコツと
  2. 準備運動やストレッチの正しいやり方を理解しましょう。
  3. 運動前後で準備運動・整理運動・ストレッチを必ず行います。
  4. 股関節運動・腰痛対策・軽い筋トレはピンピンコロリに必須。
    筋トレは自分のレベルに合った軽い運動から開始します。
  5. 運動の基本は有酸素運動。最初はウォーキングから始めましょう。
    目標は1日8千歩、ややきつめの運動(ウォーキングやスロージョギングなど)を週に150分です。
  6. 痛みがあるなど体調が悪い時は無理せず休養しましょう。
  7. 治療中の方は必ず主治医と相談してください。

股関節運動で
転倒・骨折を予防しましょう

股関節運動の最重要課題は上半身と下半身をつなぐ腸腰筋(大腰筋と腸骨筋)の筋力と柔軟性を増すことにあります。
腸腰筋を鍛えると下半身強化とともに体幹を安定させ、股関節の骨折や転倒の予防につながります。

股関節を中心とした運動は骨折予防やバランス感覚維持に有効です。
股関節は脚をつけ根から前後左右に振る動きをになう関節。股関節のまわりがほぐれ、その周辺の筋力がつくことにより、下半身の動作が行いやすくなり、転倒や骨折の予防につながります。

腰痛は予防できます

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正しい姿勢で歩行するだけで腰痛の予防・改善効果があります。
正しい歩行習慣に適度なストレッチと筋トレを加えれば腰痛は怖くありません。
運動をさぼらなければ腰痛は簡単には発生しないことをよく理解してください。

筋トレの継続はピンピンコロリ
(健康寿命)への近道です

体幹を安定させ、腰痛・膝痛を予防するには筋トレの継続が必須です。
筋トレは認知症の原因となるサルコペニア、フレイルの予防・改善に重要な役割を果たします。
適度な筋トレでピンピンコロリを目指しましょう。

最初は片足立ち、もも上げ、簡単スクワットから始めてください。
65歳以上の高齢者や体力がない方では、体力に合わせて軽い筋トレから始める必要があります。
若年者でも運動初期には軽めの筋トレから始めた方が無難です。
簡単スクワットは是非やっていただきたい筋トレです。

ストレッチのポイント

ストレッチは関節の可動域を大きくし、ケガや骨折の予防とともに、腰痛、膝痛、肩こりの改善にもつながります。
ストレッチの継続で血管拡張作用を持つNO(一酸化窒素)が増加し、血圧が改善することも報告されています。
運動できない日でもストレッチだけは毎日行いましょう。

  1. ストレッチの前に軽い歩行で体を少しあたためる。
  2. 息を止めずに、20秒程度ゆっくり伸ばす。
  3. ストレッチする部分の筋が十分に伸びている感覚を意識する。
  4. 反動をつけずに、静かに、痛いと感じない程度に適度に伸ばす。

食事と運動は
血管病予防の両輪です

血糖を上げない食事法

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糖尿病を予防するためには、まずどの食品が食後の血糖値を上げやすいかを知る必要があります。
食後の血糖値の上がりやすさを示す指標がGI値(グライセミック・インデックス)で、GI値が高い食品は食後血糖値を増加させます。高GI値の食品をいつも食べていると糖尿病になりやすく、血管病、認知症、がんにつながります。

白米、食パン、うどんなどの白い炭水化物はGI値が非常に高いので糖尿病や肥満の人では出来れば避けたい食材です。
ケーキなどのデザートや清涼飲料水もGI値が高く糖尿病の人は控えましょう。
白い炭水化物の代わりに玄米や雑穀米、ライ麦パン、そばを食べ、野菜・きのこ・海藻類、タンパク質、炭水化物の順に食べる事をおすすめします。

高血圧を予防する生活習慣

高血圧が脳卒中や心臓病の危険因子であることは周知されています。
加えて、高血圧が認知症のリスクを増すことも報告されました。
高血圧予防は健康長寿への第一歩となります。
高血圧予防のためには、

  1. 塩分制限
  2. カリウム(K)補給
  3. 適切な運動習慣

が必須となります。

血管を健康にする食品

抗酸化ビタミンA・C・E(エース)は活性酸素退治の一番槍

抗酸化ビタミンの中でおすすめはビタミンCとEです。
これらは強力な抗酸化作用を有し、血管内皮細胞の機能維持に重要な役割を果たします。
単独でとるよりも、一緒にとった方が抗酸化力が増すこともわかっています。
ビタミンCとEを豊富に含む食材をたくさん食べるようにしましょう。

体内でビタミンAに変換されるβ-カロテンにも強力な抗酸化作用があります。
ビタミンC・Eに加え、β-カロテンもできるだけ同時にとりましょう。
食卓にビタミン・エースが豊富な食品をたくさん並べて活性酸素を退治したいものです。

ポリフェノールの抗酸化力は強力です

果物や野菜の色素や辛味成分であるファイトケミカルは、体内では抗酸化物質として作用します。
ポリフェノールはファイトケミカルの代表といえるでしょう。
ポリフェノールの抗酸化力は強力で、下図のポリフェノール含有食品は血管内皮細胞を守ってくれる健康的な食品です。

オメガ3系不飽和脂肪酸は血管に良い油です

さけやさんま、さば、いわしなどの青魚には、良い油の代表であるオメガ3系脂肪酸(DHAやEPA)を多く含みます。
オメガ3系脂肪酸はLDL減少、HDL増加作用があります。さらに血栓を作りにくくし、血液をサラサラにして炎症を抑える作用があります。
LDLの酸化も防ぐ効果があり、動脈硬化を予防します。
わが国や欧米の報告でも魚を多く食べる人は心筋梗塞の発症が少ないとされています。

健康食としての和食

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和食は野菜、大豆、魚が豊富で世界一の長寿を支える健康食であることは間違いありません。
ただし、世界一との評価がある地中海食と比較すると、塩分が多い、オリーブ油が少ない、GI値が高い白米が多い、などの欠点もあります。
和食のよさはそのままにして、干物、漬物などの塩分を控える、オリーブ油を積極的に使い、食物繊維が多く、GI値の低い玄米・雑穀米を食べる、などの工夫があれば和食は世界一の食習慣として誇れるものになると確信します。

久山町研究によれば、大豆製品、野菜、海藻類などに加え、牛乳・乳製品の摂取量が多く、米(糖質)の摂取量が少ない食事パターンが認知症予防に良いことが分かっています。
また、このパターンには果物、イモ類、魚の摂取量が多く、酒の摂取量が少ないという傾向も確認されています。
日本人の乳製品摂取量は少なくヨーグルト、牛乳とともにチーズも十分に摂取する必要があると考えます。

良い油と悪い油

良い油と悪い油があることを知り、良い油の割合をぐんと高めることが必要です。
魚油に多く含まれているDHAとEPAはよい油の代表。料理油にはオリーブオイルが最適。トランス脂肪酸は"狂った油"ともいわれます。脂肪酸は「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」の2つに大きく分けられます。

飽和脂肪酸は肉の脂に多く、コレステロールの原料となります。
動脈硬化を引き起こす危険性が増えるため、とりすぎはよくないと言われています。

不飽和脂肪酸には、オメガ3系とオメガ6系の多価不飽和脂肪酸と、一価不飽和脂肪酸の3種類があります。
よい脂肪の代表はオメガ3系であるDHA(ドコサヘキサエン酸)とEPA(エイコサペンタエン酸)です。
これらは魚油やくるみに多く含まれていて、脳の正常な発達や神経細胞の形成などにも必須です。
脳卒中や心臓病の予防にも有効であることはよく知られています。

オメガ3系脂肪酸は酸化されやすいので、抗酸化力の強い野菜を一緒に食べることが必要です。
ここ数年話題の亜麻仁油やエゴマ油もオメガ3系で体に良い油です。魚が嫌いであまり魚を食べない人におすすめです。
熱に弱いのでサラダや豆腐などにそのままかけて食べてください。

一価不飽和脂肪酸のオレイン酸も良い脂肪です。
オリーブオイルの70%を占めるオレイン酸はHDLを減らすことなくLDLを減らし、脂質代謝の改善、さらには動脈硬化の予防につながります。
一番搾りの油で加熱処理がされていないものは、バージンオイルと呼ばれ有効成分が豊富で、特にオレイン酸が多いのがエクストラバージンオイルです。
バージンオイルは酸化に強く、加熱調理には、出来ればバージンオイルを使いましょう。
オリーブの実に含まれるポリフェノールやビタミンEは絞った油にも多量に含まれ、抗酸化パワーを発揮します。

オメガ6系多価不飽和脂肪酸のリノール酸は、人体にとって絶対なくてはならない必須脂肪酸で、少量摂取すると善玉コレステロールを増やして悪玉コレステロールは減らすという良い働きをしてくれるのですが、複雑なことに、リノール酸はとりすぎると正反対の作用を発揮して、動脈硬化や心臓病のリスクを高めます。
通常使われている、いわゆる植物油と呼んでいるものは、このリノール酸の豊富な油であることが多いですので、知らない間にとりすぎないように気を付ける必要があります。

危険な油は「トランス脂肪酸」という人工的な脂です。
天然では存在せず、脂肪を加熱したりして加工する際に形成されます。「狂った油」という異名を持っていて、体内に入ると細胞膜を変質させ、細胞の働きを狂わせてしまいます。
悪玉コレステロールを増やす一方、HDLを減らして動脈硬化のリスクを高めます。WHO(世界保健機構)も2003年に、その摂取量を総摂取カロリーの1%未満にするようにと勧告しています。
近年行われた調査では、女性では24.4%、男性では5.7%が1%以上の摂取であり、特に都市部の30-40代の女性では30%以上で認められました。
危険なトランス脂肪酸は、マーガリン、ショートニング、ケーキ、クッキー、ファーストフード、コーヒークリーム、インスタント食品など身近な食べ物によく含まれています。
トランス脂肪酸をできるだけ控えるよう心がけてください。

毎日とっている脂肪の内容を見直して、よい脂肪であるEPA、DHA、オリーブ油を積極的に摂り、とりすぎると悪い脂肪となるリノール酸を少なめにしてください。
トランス脂肪酸は極力回避するようにしましょう。

ゴキゲンな生活には
明るい未来がある

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今アンチエイジング医学で健康長寿への3本柱と言えば、食事、運動とともに「ゴキゲンな生活」があげられます。
学術誌「Science」に「Happy People Live Longer」と記述されたように、幸せな人は長生きするということが科学で証明されています。
いつもスマイルに満ちた生活では、活性酸素の発生を抑え、うつ病、心臓病、脳卒中、がんなどの発症率を低下させ、長生きするのです。

ここではどのような生活習慣が「ゴキゲンな生活」に導くのかを簡単にアドバイスしたいと思います。

自律神経について

「ゴキゲンな生活」を考えるうえで、自律神経の役割を簡単に理解する必要があります。

自律神経は、生命を維持するために体温、血圧、ホルモンの分泌、免疫などを調節しています。
自律神経には、交感神経と副交感神経の2つがありますが、私たちは両者のバランスをうまくとりながら生活しています。

ところが、過剰なストレスがかかると交感神経が働き、心身がリラックスすると副交感神経が高まるといわれます。
このような働きを考えると、副交感神経を高めるような生活こそが「ゴキゲン」につながるはずです。

副交感神経を高めるライフスタイル

ここでは副交感神経を高める代表的な生活習慣をあげてみました。

良質な睡眠

人間の体には、太陽の24時間の動きに合わせた体内リズムが備わっています。
体温、血圧、ホルモン分泌などは、この体内リズムで変動しています。
午後11時頃から6-7時間ぐっすり睡眠をとることにより、副交感神経が高まります。
筋肉や骨を成長させり、新陳代謝を活発にする成長ホルモンは副交感神経が優位になる睡眠中に分泌されます。
この体内リズムを調節しているのは自律神経です。

体内リズムを維持するには起床直後にカーテンを開け、日光に当たることです。
昼間は活動的に生活して交感神経を優位にし、夜は6-7時間の睡眠をとって副交感神経を優位にしましょう。

笑い

一番簡単な方法は笑うことです。
これは世界で認められた副交感神経を高める方法なのです。

まず、テレビのお笑い番組を見たらいかがでしょうか。
たいしておかしくなくても作り笑いをするとか、鏡を見ながら笑ってみるとか、どんな方法でもいいのでやってみませんか。
間違いなく副交感神経が高まってNK細胞も活性化されて免疫力もアップします。

腹式呼吸

感情的になっているときなど、心身が緊張状態になると私たちは浅い呼吸になります。
逆に安心しているときや眠っているときなど、全身の緊張がほぐれているときには深い呼吸になります。
息を吸ったときにお腹がふくらみ、吐いたときにお腹がへこむ、腹式呼吸です。
1日に10回以上腹式呼吸を行うことをおすすめします。

方法
  1. 1回の呼吸を丁寧にできるだけゆっくりと行うのがコツ。
  2. 楽な姿勢で、口から息をゆっくりと吐ききる。このとき、お腹がゆっくりとへこむ。体内のすべての息を吐き出すつもりで行うとよい。
  3. 息を吐ききったら軽く口を閉じ、今度は鼻からゆっくりと吸う。このとき、お腹はゆっくりふくらむ。吸い終えたら一瞬息を止め、また2に戻って5回程度繰り返す。息を吐く時間は吸い込む時間の約2倍とする。

適度な運動

ウォーキングなどの有酸素運動は副交感神経を高め、ストレス解消につながることは良く知られています。
運動により、幸せホルモンといわれるセロトニンも分泌されます。
鼻歌交じりに、背筋を伸ばして歩くとより効果的です。

定期的に必要な検査

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ピンピンコロリを実現するためには適切な生活習慣が必須です。
しかしながら、どんなによい生活習慣を行っても完全に病気を防ぐことは出来ません。定期的に検査を行い、早期に病気を発見し、必要に応じ治療を施すことが重要です。

では、どのような検査をうけるべきでしょうか?
最も重要なことは日本人の死因や介護を必要とする疾患を頭におき、出来るだけ健康寿命を延伸するのに役に立つ検査を受けるべきです。

そのような観点からみると以下の5つが大きなポイントになります。

  1. 生活習慣病の予防
  2. 血管病(心筋梗塞・脳卒中など)の予防
  3. 認知症の予防
  4. がんの早期発見
  5. 骨粗鬆症の予防

上記の1~5のために有用な検査を以下に示します。

  1. 糖尿病、脂質異常症、貧血、肝機能、腎機能などの評価が可能な血液検査

  2. 動脈硬化の進行度をチェックする検査

    血圧脈波検査(動脈の硬さや詰まりを反映する指標)
    頸動脈超音波検査
  3. 家庭での血圧測定

  4. 認知症検査

  5. がん検診

    ※日本人の最大の死因はがんです。
  6. 骨粗鬆症の診断

    骨密度測定
    骨代謝測定(血液採血による骨破壊・骨形成マーカーの検査)